旅行日:平成30年5月31日
5月病というわけではないが、体調を崩したりして半月ほど出掛けられなかった。休みの並びも良くなかった。5月末も泊りがけの旅の予定が雨で流れた。今回は雨では都合が悪い事情があった。
その代わりに、雨の日らしい景色を見に出掛けた。
5時半過ぎに出発し、海に向かって南下。茅ケ崎海岸から国道134号を西へ走る。昨夜からの雨は上がっていて、富士山も姿を見せている。
箱根の二子山も見えるので、大観山からの景色を期待して箱根新道に針路を採った。が、外輪山の内部には濃い霧が立ち込めていた。そのまま県境を越え、長い坂を下った。
重畳たる山襞を埋める靄 (三島市谷田にて)

三島塚原ICから伊豆縦貫道や国道136号を経て南下し、8時半ごろに修善寺で朝食。
修善寺からは大見川に沿いを県道12号で東へ。梅木という集落にはレンガ造りのアーチ橋が通る。
この橋は明治44年に竣工した梅木発電所への導水路を通すためのもので、6連のアーチ橋を採用している。発電所もレンガ造りで竣工し、水路橋ともども茶屋が出るほど見物人で賑わったという。が、発電所の建物は昭和5年の北伊豆地震で倒壊し、現存しない。のちに木造で再建され、現在も稼働している様子だった。
レンガ造りの水路橋

あたりは水田地帯。田んぼには大きなオタマジャクシが泳いでいた

次に訪れたいのは万城の滝。大見川支流の地蔵堂川に懸かるという。
キャンプ場を併設した意外と広い駐車場にクルマを停め、谷へと下る。轟音が聴こえてきて、端正な滝が現れた。
万城の滝

滝の落ち口の回りの柱状節理が見事だが、これはモルタルなどを入れて補強した姿だという。この場所は古い火山である天城の熔岩流の先端にあたり、差別浸食によって滝になったのだろう。かつては柱状節理の下まで遊歩道がのび、滝の後ろに回ることができる「裏見の滝」だったそうだ。
大々的に手を加えたという経緯があるため、伊豆ジオパークのジオスポットに加えられなくなってしまったという。いま、私たちが愛でている景観も、あくまで自然が移ろいゆく中のヒトコマに過ぎないということを肝に命じなくてはならない。
とはいえ、勢いよく落下する水の音を轟かせる見事な直瀑であった。
NDフィルターを使用して撮影、15秒露光

落ち口のあたり

上から吊るしたような柱状節理

サワガニを発見。カメラに向かってピース?

県道に戻り、さらに大見川の上流へ向かうとワサビ田が増えてきた。
天城の山懐に抱かれた筏場という集落は特にワサビ田が多いところだ。ここには9年前にも来たことがあるが、これほどの規模だったことは忘れていた。
筏場集落内の田んぼとワサビ田。地図記号はどちらも「水田」

集落よりも上流で、谷を覆いつくすワサビ田。ワサビは日光に弱いため、日除けが連なる

天城の澄んだ湧水が段々に流れ落ちる

やや道の狭い国士峠を越えると、湯ケ島で国道414号に出る。せっかく近くまで来たので、浄蓮の滝も見ていく。止んでいた雨が再び降りだした。
伊豆半島の東部には一度の活動だけでできあがった単成火山が多い(伊豆東部火山群)が、浄蓮の滝の誕生もそうした火山である鉢窪火山と関わっている。約1.7万年前に噴火した小さな鉢窪火山は熔岩を流して谷を埋め、そこを本谷川(狩野川上流部の別称)が侵食して滝が生じた。
狭い谷にも土産物屋が進出し、滝壺の下流はマス釣り場になっており、全体的に騒がしい雰囲気だ。
浄蓮の滝

鉢窪山と浄蓮の滝の位置関係
(地理院地図「自分で作る色別標高図」で筆者作成、註記加筆)
滝から続く本谷川

熔岩の下からの湧水を生かしたワサビ田を間近に見ることもできる

一旦、湯ケ島に戻り、猫越川方面へ。下ノ段の棚田が見たかったのだが、残念ながら休耕中。鹿害が著しく数年前から耕作を行っていないそうだ。
この辺りは鉱物が多いらしく、持越川の上流にはかつて持越鉱山(金鉱山)が操業していた。昭和53年の伊豆近海地震の際には鉱滓ダムが決壊し、狩野川をシアン化合物が流下する被害を出した。
耕作が行われていなかった下ノ段の棚田

河床の岩石に特徴がありそうな持越川

金山という集落の棚田

長岡まで戻り、半島西側の山を越えて内浦湾沿いに出た。ここは沼津市であるが、旧田方郡内浦村(明治29年までは君沢郡、昭和30年に沼津市に編入)であるので伊豆国にあたる。
内浦漁港にある「いけすや」で昼食。沼津市を本拠の一つとする
でーひらさんには「観光客向けだよ」と言われていたが、ちょるや氏やへびぼんさんが上げていた画像に惹かれて来てみた次第である。
雨の内浦漁港

漁港内にある「いけすや」

ここのメニューはアジ尽くし。「満腹御膳」という活アジ丼とアジフライが両方楽しめるものを註文した。アジには脂がのっていて、フライも肉厚で、とても美味しかった。

まだ14時過ぎだが、沼津市まで来てしまうと手詰まり感がある。温泉に浸かっていくことにし、ルートに近い函南町の「湯~トピアかんなみ」へ。町民向けといった感じの施設ではあったが、浴室は広々としており、ゆったり入浴できた。
「湯~トピアかんなみ」

雨に濡れるヤマブキの花

16時頃に出発し、往きと同じ箱根新道経由で帰途に就く。前も後ろも詰まった状態での下りの運転は作業感が強く、眠くなってくる。このルートだと真鶴道路はもちろんのこと西湘バイパスの石橋料金所もパスできるので、橘料金所で260円払うだけで済む。
藤沢市内の渋滞を避けるべく、辻堂で買い物をして時間調整。
走行距離は263キロ、実燃費は23.61キロ/リットルであった。気温が低くて冷房を使わずに済み、箱根峠をした割りには高数値が出た。
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