FC2ブログ

Entries

台北の近代建築をめぐる(前) 台湾博物館、中山堂、中華民国総統府など (臺灣・はじめての国外旅行3)

旅行日:平成30年4月13~16日③

最初の記事 台湾・はじめての国外旅行
前の記事 台北101にのぼる
 台北駅前を東西に延びる通りが忠孝西路で、かつての台北府城の北辺にあたっていた。
 台北府城は19世紀末に清国によって築かれ、1894年に完成した。日清戦争勃発の10年前、下関条約が調印されて日本軍が台湾に上陸する11年前のことであった。
 台北府城は高さ5メートルほどの城壁と濠に囲まれていたというが、日本統治時代に幅の広い道路に作り替えられた。

 日本によって旧府城内に多くの官公庁が築かれ、大企業の支店も進出した。その時代の建物が今でも残っている。日本人の一人として複雑な心境はあるが、それらを見て回りたい。

国立台湾博物館 明治41年(1908)に児玉総督後藤民政長官記念館として竣工。児玉は第四代台湾総督(明治31~39年)の児玉源太郎、後藤は民政長官の後藤新平のことである。翌明治42年に台湾総督府博物館となり、中華民国接収後も博物館として利用されている。IMG_1512_20180424214923875.jpg

台湾博物館土銀展示館 昭和8年(1933)に日本勧業銀行台北支店として建設された。台湾の勧銀5支店は中華民国に接収されたのち、省営台湾土地銀行となる。道を隔てた台湾博物館の別館であり、「土銀展示館」の名称はそこから来ている。IMG_1514_20180424214924271.jpg

旧三井物産社屋 現在の用途は不明。2階以上が歩道の上に迫り出しているのは雨の多い広州の建築様式。しばしばバイクが停められているので、台湾では「騎楼」と呼ばれるらしい。IMG_1511.jpg

 日本統治時代の台湾を代表する建築の一つが、旧台北市公会堂である中山堂。“中山”とつく施設は台湾に多いが、これは孫文の号である孫中山に由来する。

中山堂
IMG_1517.jpg

 この場所は台北府城の「欽差行台」(台湾巡撫の執務の場)があった場所で、台北を押さえた日本はこの地で台湾統治を宣言した。政庁はそのまま台湾総督府として使用され、後述の新庁舎が完成するまでは台湾統治の拠点となっていた。
 台北市公会堂は昭和天皇の皇位大式典の記念事業の一環として建設され、昭和11年(1936)に竣工した。デザインは西洋風ではなく、中国・アラブ・ギリシアなどの要素を折衷している。
 正面の車寄せは大きな屋根で覆い、風雨をしのげるようにしてある。また、柱の裏手にある水場は足の泥を洗い流すための足洗い場。台湾の風土に合わせた設計がなされている。

 日本敗戦の際には、当館2階の大宴会場で「中国戦区台湾省降伏式典」が開かれ、台湾総督・台湾軍司令官の安藤利吉(拘束され、上海で自決)から陳儀行行政長官に降伏状が手交された。
 中華民国接収後は中山堂という名称に改められた。このとき、菊の装飾はことごとく中華民国を表す梅に変えられたそうだ。

正門にある足洗い場
IMG_1520_20180424221038871.jpg

豪壮な大ホール。分かりづらいが、柱の上部の装飾は梅
IMG_1518_20180424214927b91.jpg

中央階段に据えられた黄土水の「南国」(通称「水牛群像」)は中華民国の国宝
IMG_1519_20180424221037d7c.jpg

合作金庫銀行城内支店 大正末ごろの建築で、旧台北市第十信用合作社。1985年に合作金庫銀行となる。土曜日で休行のため、騎楼を利用して露店が開かれていた。
IMG_1521_20180424221039e2f.jpg

旧帝国生命会社 帝国生命は現在の朝日生命保険の前身で、その台北支社の社屋だった。中華民国による接収により、千代田・第一・日本・明治・野村・安田・住友・三井などの保険会社とともに省営台湾人寿生命公司となった。現在は銀行として利用されているようだ。
IMG_1522.jpg

 日本統治時代を象徴する建築は、なんといっても現在の中華民国総統府、かつての台湾総督府である。
 普段の見学は平日の午前中に限られるが、この日は何かのイベントが開かれているため参観することができた。敷地前には小銃を持った兵が立ち、なんとも物々しい。身分証明書(パスポート)のチェックに続き、手荷物検査。懐中電灯で中を照らして確認する厳重さだった。
 黒塗りの高級車が並んでいるのを横目に見ながら正面に回り込む。

旧台湾総督府、現中華民国総統府
IMG_1524_20180424221043210.jpg

 レンガ造りのこの庁舎は大正8年(1919)に竣工し、中山堂のところにあった旧庁舎から移転した。
 建設にあたっては後藤新平の提唱でコンペが開かれ、乙賞(甲賞該当なし)の長野宇平治の設計案が採用された。長野宇平次は辰野金吾の弟子にあたり、日銀の技師として日本橋の日銀本店や各支店の設計を手掛けた人物である。当初案では小さかった中央の塔屋は、辰野金吾によって高さ60メートルに変更され、台北の街を睥睨するような高層建築となった。

 太平洋戦争では昭和20年5月31日の台北空襲で爆撃を受け、建物の一部が損傷し、内部はほぼ全焼した。いま、この姿をみることができるのは、中華民国接収後に解体されることなく復元されたためだ。

象徴的な高さ60メートルの塔屋。微動だにしない衛兵が立つ
IMG_1526_20180428081536f62.jpg

 館内の撮影ができるのは休日の見学時に限られていたようで、非常に運が良かった。
 ショップで「大台北俯瞰図」(昭和10年、大窪四郎)のクリアファイルを70元(約259円)で購入。日本人向けとも思えないが、『昭和台灣』のロゴが入っていた。中文の開設板にも明治・大正・昭和の文字が見えた。

エントランス
IMG_1528_201804242210440ce.jpg

 総統府の裏手は国史館(総統副総統文物展)。建物は大正13年(1924)に竣工した旧総督府逓信部。
 各国との外交で贈られた芸術品などが地域別に展示されていた。

国史館
IMG_1532_20180424222241078.jpg

館内の様子
IMG_1534_20180424222242d2a.jpg

 ここにもミュージアムショップが入っており、「台北市街図」(300元)と「中華民国全図」(180元)を購入した。
 「台北市街図」は大正3年発行、縮尺8,000分1。陸地測量部の調製図風だが、「新高堂書店」というところが出した民間図だった。飾り気が少なく、註記が当時の町名と公共施設程度にとどまっているのが気に入った。

飾り文字の「台北市街図
IMG_1815_2018050113553138b.jpg

 一方、「中華民国全図」は私が台湾でぜひ購入したいと思っていた品で、民国64年(1975)に中華民国の内政部が出したものの復刻版である。「全図」というだけあって、もちろん台湾にとどまらず、中華民国が主張する領土が網羅されている。

「中華民国全図」
IMG_1812.jpg

国都は南京で、北京はなく「北平」(写真)
IMG_1813.jpg

日本は山形県が水没しているなど、結構ガバガバ。韓国は南北統一している
IMG_1814_20180501135530e35.jpg

 総統府の裏手は憲兵指揮部や軍事博物館のある一劃。日本統治時代は乃木町という町名で、陸軍官舎がなどが建ち並んでいた地区にあたる。政治体制が変わっても、土地利用は大きく変わっていないことが判る。

裏側から見る総督府
IMG_1537_2018042422224308e.jpg

 南北の中華路は片側2+3車線の10車線道路。台北府城の西辺であり、城壁を崩して濠を埋め立て、台鉄縦貫線が敷かれていた。現在は台鉄の他、捷運板南線、松山新店線の3路線が地下を通っている。

幅の広い中華路
IMG_1538_20180424222245cb6.jpg

 中華路の西側は西門町。若い人向けの商業施設が集まっているエリアで、土曜日ということもあって大いに賑わっていた。
 台湾では「○○街」はあっても「○○町」という地名は使われないが、日本統治時代の住所だった「西門町」が通称地名として使われている。

若い人たちでにぎわう西門町
IMG_1539.jpg

 西門駅から捷運を利用し、一旦ホテルに戻る。この駅は板南線と松山新店線が方面別に二段重ねになっていた。赤坂見附駅のように乗り換え客の便が配慮された構造だ。
 松山新店線と淡水信義線を中山駅で乗り継ぎ、民権西路駅で下車。松山新店線は緑、淡水信義線は赤とそれぞれにラインカラーがあるが、どの電車にも青い線が入っている。ホーム上にラインカラーが入れてあるので、それほど紛らわしくはないが、日本とは違うなと思う。最初に乗った板南線はそもそもラインカラーが青だったので、違和感は抱かなかった。

※明治28年(1895)から昭和20年(1945)までの間は、明治・大正・昭和の元号を使用しました。

次の記事 台湾海峡に臨む河港・淡水
関連記事
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://sagaminomen.blog.fc2.com/tb.php/735-1deff00b

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

さがみぃ

Author:さがみぃ
相州生まれの相州育ちです。
このブログと筆者については,水先案内からご覧いただけます。

トップページ

【PC推奨】行先別INDEX

アクセスカウンター

(平成24年8月22日設置)

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる