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【積雪深375cm】カルデラの底に湧く肘折温泉へ (豪雪の東北地方を列車とバスでめぐる旅5)

旅行日:平成29年2月(20~)21・22日⑤

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 豪雪の東北地方を列車とバスでめぐる旅、第2日目。湯沢から乗った奥羽線列車は雄勝峠を越えて山形県に入り、新庄に10:44に着いた。
 新庄からはバスを利用し、本日のメインともいえる大蔵村の肘折温泉に向かう。肘折は青森県の酸ケ湯や新潟県の津南町と並ぶ多雪地で、積雪深ランキングの常連だ。
 バスの発車時刻の11:25まで40分ほどあるので、やや早いが昼食を摂っておく。
 
新庄駅
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 入った店は、駅前通りの「急行食堂」。いわゆる駅前食堂というヤツで、以前に雑誌か何かの旅行記で読んだのを憶えていた。
 新庄市の名物だという「とりもつラーメン」を註文。とてもシンプルな麺だったが、この季節向きであった。

昔ながらの食堂の雰囲気が色濃い「急行食堂」
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透き通ったスープのとりもつラーメン
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 食事を済ます頃にはバスの時刻が近づき、程なくしてマイクロバスの「おおくらくん1号」が入ってきた。県立新庄病院―新庄駅前―肘折温泉間の山交(山形交通)バスは昨年度末で廃止になっており、大蔵村営バスに移管された。平日は6.5往復で、昼間の閑散時間帯の運行もある。

大蔵村営バス「おおくらくん1号」
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 4人の客を乗せたバスは新庄市街を抜け出し、鶴岡街道(国道47号)を西へ走る。新庄市にすればヨソの自治体のバスであるが、市内にも分け隔てなく停留所が設けられているようだった。自動放送装置が設けられていないので、おじいさん運転手が停留所一つ一つ肉声で案内する。
 20分ほどで蛇行する最上川が見えてくると、本合海。大きな河岸があった地だ。国道458号に折れる。
 大蔵村に入るとすぐに役場のある合海の集落があり、多少の客が乗り降り。まだ新しい大蔵橋で最上川を渡った。

最上川を渡る
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 国道は最上川支流の銅山川の谷へと分け入る。肘折温泉はこの川の上流に位置する。
 土壌が露出している崖は火砕流堆積物のようで、白っぽく見える。

 肘折温泉は肘折カルデラと呼ばれるカルデラ内に位置する。このカルデラは直径約2キロの小規模なもので、約1.2万年前に短期間の活動があったことが判っている。

雪の隙間に覗く火砕流の痕跡
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 カルデラの火口瀬は銅山川の谷が急峻なため、国道は外輪山の高みに登ってそれを避ける。「日陰倉」、「板谷倉」、「小松倉」と「倉」のつく地名が並んでいるのは、切り立った崖を表す「嵓(くら)」が連続するからだろう。
 積雪がどんどん増し、やがて見通しが利かないほどの雪の壁になった。小雪のきょうは路面が見えているので安心だが、ひとたび大雪になれば真っ白な世界に変わってしまうのだろう。路面をきれいにして壁を築き上げる除雪技術に感心する。

 やがてやや長い肘折トンネルをくぐり、四差路を右折して県道に入るのだが、新庄方面と肘折方面以外の2方向は通行止めになっていた。国道458号は寒河江市に通じているが、この先の十部一峠は国内唯一の通行可能なダート国道として知られる。

四差路だが、肘折方面以外は通行止め
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 県道は肘折希望大橋を通って、カルデラの底に位置する温泉街まで一気に下る。外輪山と温泉街の間には200メートル近い比高があり、これを克服するため、希望大橋はS字カーブとループを組み合わせた複雑な造りになっている。眺めが良く、肘折温泉の全景が見えた。

雪の壁の間を進むIMG_0693_2018031704405352c.jpg
(以上3枚の写真は帰りのバスの後部座席から撮影した)

色別標高図にみる肘折カルデラ肘折カルデラ
(地理院地図「自分で作る色別標高図」により作成)

 急な坂を下りきったバスは、唐突に温泉街に突っ込んだ。道は狭く、その両側に温泉旅館が軒を接しているので、かなり窮屈な印象だ。
 空き地に折れて方向転換すると、そこが終点の肘折温泉待合所停留所であった。定刻から5分ほど遅れ、新庄駅からちょうど1時間かかった。これだけ乗ったのに運賃は600円と安い。しかも、車内では100円券11枚の回数券を1,000円で販売していたので、往復運賃は1,100円になる計算だ。

肘折温泉待合所に到着
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 14時発のバスで引き返すので、肘折温泉での滞在時間は1時間40分ほど。身体が冷えそうなので入浴は後回しにして、まずは散策だ。

 温泉街はしっかり除雪されているが、名に負う豪雪地帯だけあって積雪は凄まじいものがある。12時の時点で観測点・肘折は気温氷点下2.7度、積雪深375センチとのこと。
 なお、9日前の2月13日には積雪深が445センチに達し、それまでの414センチを上回って過去最高記録を打ち立てていた。9日間で70センチも減った勘定で、意外と増減があることを知る。4メートルだろうと3メートルだろうと、もはや南関東の人間の理解を超えている。

雪庇だらけで川面が見えないほどの銅山川
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雪に埋まりかけた橋上から上流方向を眺める
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 上流側には源泉公園や足湯があるようだが、除雪されていないため辿り着くことは困難だ。諦めて引き返す。
 バス通りには2、3階建ての小規模な温泉旅館が多く、古い時代の温泉街と湯治場の雰囲気が残っている。
 肘折温泉は湯量が豊富らしく、多くの旅館は源泉かけ流しなのだそうだ。温泉水は融雪にも利用されており、孔の開いたホースから湯がほとばしっている。ただ、排水性が悪くて裏道や駐車場は水溜まりだらけだった。

温泉街には古い温泉旅館が多い
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すっかり積雪に埋もれた薬師神社
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明治元年創業、3階建ての丸屋旅館
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クラシカルな看板が掛かっていた
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一等地にあった旧肘折郵便局
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景観に調和した丸ポスト
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 肘折温泉の開湯伝説はいくつかある。その一つは諸国巡礼中の豊後国の行者が大同2年(807)に当地で道に迷った際に地蔵菩薩に出会い、温泉の存在を聞かされたというものである。地蔵菩薩は崖から落ちて肘を傷め、湯で癒したことから、温泉の存在を広めてほしいと言った。温泉街の近くには「地蔵倉」の地名もある。

 明徳元年(1390)には出羽三山八方七口の一つとして肘折口が開かれた。江戸時代には夏になると行者で賑わうようになり、当地で一夜を明かしてから三山の一つ月山に登った。

 川の名前の由来となった銅山は肘折から14キロ南の永松銅山で、慶長16年(1611)の開山とされる。元禄16年(1703)の資料によると、年間の採銅量は約480~600トンで、伊予国の別子銅山、出羽国の院内鉱山に次ぐ第3位であった。温泉街の近く、苦水川沿いにも大蔵銅山跡が残る。

銅山川と苦水川の合流点
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 一旦温泉街を離れ、県道を少し高みまで上がってみた。眺望の良い希望大橋の上までぐるぐる登るのは厳しいので、その下まで。

道幅よりも雪壁の方が高い
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肘折カルデラの内側を一望にする
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これから向かう温泉施設「肘折いでゆ館」
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肘折希望大橋を見上げる
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 ひとしきりの散策を終えたところで、坂を下って「肘折いでゆ館」へ。体育館のような立派で堅牢そうな建物で、浴室は3階にあった。露天風呂はない代わり、大きなガラス窓から眺望が利く。
 浴槽は大小二つあり、温度が異なる茶色がかった湯に浸かる。真昼間とあって浴客は数人。

 入浴料は400円と安いのだが、「ドカ雪・大雪割キャンペーン」で100円引きになった。様々な割り引きがあり、積雪深の記録を更新すると宿泊料まで無料になると記してあったので、先週に来た人は幸運だったろう。

「いで湯館」と肘折希望大橋。わずかに青空が覗いた
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「いで湯館」近くの橋の上から。左手後方の山が中央火口丘の三角山
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旅館群のあいだを縫って戻りのバスがやって来た
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 帰りのバスも乗客は数人だった。温泉でしっかり温まったので、車内が暑く感じられる。
 新庄駅前には14:55に着き、15:17発の山形新幹線「つばさ号」に繋がる。これで福島まで行けば、その先は鈍行乗り継ぎだって23時前には横浜まで帰れる。
 が、雪国にもう少しいたい気持ちと、福島までの奥羽線こそ普通列車で辿りたい思いが出てきた。そこで、一部行程を変更することにした。新庄発は16:14発に変わるので、1時間ほど街歩きができる。
 バスは新庄駅前の一つ手前の沖の町で捨てた。

次の記事 【積雪深151cm】雪晴れの新庄城下町を歩く
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