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奥羽線峠駅と板谷駅のスイッチバック遺構を見る (2017晩夏の越後南東北ドライブ旅 9・終)

旅行日:平成29年8月29日~9月1日⑨

最初の記事 曇天空振り魚沼スカイライン
前の記事 赤湯ラーメン,南陽スカイパーク,旧高畠駅
 越後・南東北の旅,最終日。高畠から広域農道を抜けて,奥羽山脈を越える栗子峠下の万世町まで来た。
 この後は奥羽線の旧スイッチバック駅を巡ることにしている。平成2年まで奥羽線の赤岩,板谷,峠,大沢の4駅は連続してスイッチバック設備を有し,各停列車は前に後ろにと進行方向を変えながら峠を越えていた。

 水窪ダムを経て鉄道沿いに米沢街道を辿る積りでいたのだが,水窪への県道が通行止めになっていた。仕方がないので,分水嶺を西栗子トンネルを抜け,板谷駅から峠駅まで米沢街道を逆行することにした。大沢駅は諦めることになるが,峠駅は押さえておきたかった。

 米沢街道(県道232号)は狭隘であった。江戸時代は主要街道であったはずだが,明治時代に栗子峠越えの万世大路が開かれたことによって廃れ,顧みられなくなったのだろう。峠駅に行くには,板谷峠の手前でさらに細い路に折れなければならない。
 前を走っていたクルマと分かれて,沢沿いを駅へと下る。別の道は秘湯の姥湯温泉へと通じている。道が悪く,数年前までは切り返しがが必要なクルマのスイッチバックがあったらしい。
 ようやく辿り着いた峠駅前は寂れきっていた。

峠駅前の廃屋
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 いまの峠駅前で唯一の人家であり店が,「峠の茶屋 最上屋本店」。名物である峠の力餅を売っている。もう17時だから閉まっているだろうと思ったが,声を掛けると奥からおじさんが出てきてくれた。土産に力餅を買う。白い小さな餅に餡が入った素朴な菓子だ。
 最上屋本店は創業明治27年で,同34年より峠駅で「峠の力餅」の駅売りを始めたという。峠駅はスイッチバックのために列車が数分停車するので,商売にはもってこいだったのだろう。
 現在は1日に6往復の普通列車のうち昼間の3往復が停車する際に駅での立ち売りを行っている。スイッチバックの解消で列車の停車時間は数十秒になってしまった。道路だって悪いから,ここでの商売は大変だろう。

峠駅前で120年以上営業している最上屋本店
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経木に入った峠の力餅
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 スイッチバック時代の峠駅は福島方に引上げ線,青森方にホームを配していた。ホームがあったのはまさに峠の茶屋などがあるあたりで,当時はちゃんと駅前だったのだろう。極端に平地に乏しい地であるので,ホームの先の線路はトンネルに突っ込む形で有効長を確保していたらしい。現在は立ち入りできない。
 線路が複雑に分岐していた箇所には頑丈そうなスノーシェッドが架けられ,ポイントを雪害から守っていた。平成2年のスイッチ廃止後,ホームはそのスノーシェッド内に移設された。

スイッチバック時代のホームへの線路跡
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スノーシェッド内のホーム
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 福島と青森を結ぶ奥羽線は,明治27年に青森・弘前間が開通したのを皮切りに,当時「奥羽北線」と呼ばれた北側から順次延伸した。一方,「奥羽南線」の方は明治32年に福島・米沢間が初めて開通している。
 この際,奥羽山脈を板谷峠で越える庭坂・関根間は特に急勾配が連続する線形で建設され,最急勾配は38パーミルに達した。国鉄路線は原則的に25パーミル以下で建設されたので,当区間は例外的である。
 非力な蒸気機関車は坂道発進を不得意とするので,峠越えの赤岩信号所(明治43年に駅に昇格),板谷駅,峠駅,大沢信号所(明治39年に駅に昇格)はスイッチバック式とした。明治42年には勾配を登り切れなかった列車がトンネル内で停止し,排煙で機関手が窒息して列車が後退し,赤岩信号所で顛覆・粉砕して死者を出すという事故も起こっている。
 福島・米沢間は石炭節減を理由に昭和24年に資材不足を押して電化され,スイッチバック各駅も駅に停まる列車以外は通過できるように改良された。さらに昭和40年代以降に順次複線化される。そして,東北新幹線との直通運転に向けた改軌工事のため,平成2年に各駅のスイッチバック廃止。

 現在のホームの福島方にはすぐ上下線の板谷トンネルが口を開けている。
 標高は622メートルで,奥羽線最高所の駅となっている。板谷トンネル内に標高624メートルの最高点がある。
 左側に線路のないトンネルがあるが,こちらはスイッチバック引上げ線の遺構だ。米沢方面から峠路を登ってきた列車は,一旦このトンネルに頭を突っ込んでから,バックで本線を跨いで峠駅に進入していた。米沢方面に向かう時はその逆の手順だ。
 薄暗いスノーシェッド内には強烈な夕陽が射し込み,独特の雰囲気を際立たせている。

分水嶺の板谷トンネルと引上げ線の廃トンネル
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左がかつてのホームへの分岐線跡,現在の駅前通り
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スノーシェッド内に夕陽が射し込む
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 引き返して板谷駅にも寄る。こちらは谷もやや広がっており,駅周辺に集落もあるので,開けた印象を受けた。なお,板谷は阿武隈川水系の太平洋側だが,山形県米沢市に属する。山形県内では,他に最上町の堺田にも太平洋側の地区がある。
 スイッチバック時代は坂下側の福島方にホームが,坂上側の青森方に引上げ線が設置されていた。
 峠駅同様,スイッチバックを廃止後は分岐点だったスノーシェッド内にホームを移設している。この駅は旧ホームにも入ることができたが,線路があったところはすっかり木々に覆われていた。そこから現ホームへは舗装された線路跡を歩くことになる。2線のうち1線分は新幹線用に改軌されて保線用になったようだが,使われている形跡はない。

灌木や草に覆われた旧板谷駅ホーム
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現在の板谷駅への通路
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ログハウス風の駅舎とホーム
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 現在のホームは22.4パーミルの勾配上にある。構内を外れると36パーミルとなり,見るからに急な坂が続いているのが目に見える。
 列車の時刻は調べていたが,急に構内踏切が鳴り出し,上りの新幹線が下ってきた。金曜運転の臨時列車らしい。それから少しすると,定期の下り「つばさ145号」が通過。今度は覚悟があったので,踏切が鳴り出す前から山峡に走行音が反響するのが聴き取れた。

駅名標と勾配標
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旧ホームへの分岐点。保線用の引き込み線に転用
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新幹線「つばさ」が峠道を登ってきた。線路脇に36パーミルを示す勾配標が立つ
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 板谷駅より福島寄りの赤岩駅も旧スイッチバック駅であるが,昨年(平成28年)から全列車通過の休止扱いになっている。道が悪くてクルマですら行くのは大変だというので,初めから立ち寄る積りはなかった。
 国道13号に戻り,板谷大橋を渡って福島県に入る。続いて長大な東栗子トンネルをくぐり抜け,福島盆地へと下りてゆく。交通量は多い。並行して東北中央道が今年度中の開通を目指して工事が進められている。福島・米沢間は通行料無料なので,開通すれば13号の交通量は少なくなるだろう。

 そのまま進めば東北道の福島飯坂ICに出られるが,東北に対する名残惜しさのようなものがあって,一つ先の福島西ICまで一般道を走る。すっかり陽は暮れ,夕ラッシュの真っただ中だ。
 混雑気味の福島西バイパスを回り,西ICへ。燃料が心許ないので,安くないガソリンスタンドで補給しておく。

 東北道に入ったのが19時頃。次の福島松川PAででーひらさんにハンドルを託す。帰路のきょうは長距離になるので交代要員も兼ねているのだ。ワンデイ保険にも加入してもらった。
 東北地方を脱し,那須高原SAで小休止。ソフトクリームを食べる積りでいたが,なんと機械メンテナンスで早目の営業終了。やむを得ず昨日残った笹かまをかじる。
 4交代で東京を目指す予定だったが,まだいけると言うのででーひらさんが続投。結局彼の運転で埼玉県の加須SAまで進んだ。しばらく休んで体力を恢復した私が引き継ぎ,首都高へ。関東地方に入るあたりから断続的に降っていた雨は強まり,車線が見えないほどになった。危うく小菅JCTで常磐道方面に連れて行かれるところだった。

 でーひらさんを葛飾区内の自宅に送り届けたのが土砂降りの23時頃。
 環七から湾岸線へ廻り,1時近くに帰着。
 最終日の走行距離は579キロで,4日間の合計は1509.5キロに達した。最初の給油から最後の給油までの平均燃費は23.1キロ/リットルであった。
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