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薩摩半島をドライブ(3) 坊津から野間崎をまわって吹上浜へ

平成29年3月6~9日⑧

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 南九州への旅,第三日目。枕崎から国道226号を西へ進み,南さつま市(旧坊津町)に入った。
 きょうは朝から天候が定まらず,陽が射したり雨や雪や雹が降ったりしている。

 次に訪れたいのは坊津。枕崎と野間半島先端部の野間崎にかけてはリアス式海岸が続き,地図上の国道は延々カーブを繰り返して描かれている。
 そんな険しい地形だからこそ,急峻な海岸線の間には良港が点在する。坊ノ浦の奥部に位置する坊津もその一つである。
 国道から県道に乗り入れると,途端に道が狭くなった。両側の建物が軒を接している。平地に乏しい港町であるので,崖の上まで宅地が広がり,崖っぷちのなかなか際どいところに建っている家もある。

滝のような川の両側にも家々が建つ
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 坊津は大陸貿易で栄えた港町であった。「坊」の由来となった一乗院は,百済国の日羅が敏達天皇12年(583)に建立したとされ,古くから要津であったことを窺わせる。
 室町時代初期には別府氏が知行していたが,島津久豊が別府氏を婿として迎えることで南薩摩を平定した。応永27年(1420)頃のこととされる。島津氏の目的には坊津と北隣りの泊津の領有があった。

 クルマを停めて歩き出すと,陽が射してきた。青空も見えて気分が高まるが,きょうの天気は信用ならない。

坊津港
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 江戸時代の初め,文禄・慶長の役の際に連行された明国人が坊津から送還された。明国との関係改善は徳川家康の急務であり,その意向によって島津義弘の命を受けた貿易商人の島原宗安が送還業務を担ったそうだ。

 寛永年間(1624~44)に鎖国令が出されると,中国船は長崎以外への入港が禁じられた。しかし,これで明国との貿易が途絶えたわけではなく,坊津はそのまま密貿易の拠点となった。当時の交易品は織物,薬品,書籍,陶器,香料などであったという。密貿易は遭難などを装って入港してきた明舟によって行われ,鹿児島藩でも要津に唐通詞(通訳)を配置していた時期もある。
 しかし,享保年間(1716~35)には鹿児島藩による大規模な密貿易の取り締まりが行われ,坊津の密貿易は一掃された。この取締りは「享保の唐物崩れ」と称され,江戸時代後期には坊津は貿易港からカツオ漁の漁港へと変質していった。

 街の中には当時の密貿易屋敷が残っているというが,手持ちの大縮尺の地図では,入り組んだ道の奥のその場所に辿り着くことができなかった。
 路地に入ると,石畳みの細道があったりして,単なる漁港とは異なる街の姿が見て取れた。

坊津の裏路地にて
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 坊ノ浦の北には峰ケ崎という小さな半島が突き出している。その付け根には南さつま市坊津歴史資料センター「輝津館」という施設があり,坊津に関する資料館になっていた。立派な施設で見応えもあったが,マイナーな場所なので見学者は少なさそうであった。

坊津の高台に建つ近代的な輝津館
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 この場所は高台であるので見晴らしがよい。坊ノ浦の入り口には双剣岩という尖った二本の岩が立つ。浦の中は波が静かだが,外側は荒れ気味だ。
 峰ケ崎の北の泊浦も望むことができた。泊浦の湊は泊津といい,坊津と合わせて坊泊とも称される。

輝津館前から坊ノ浦を一望する
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坊ノ浦の湾口に突き立つ双剣岩
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切り立った崖が直接海に落ち込む泊浦
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 国道を北へと走り,泊津を過ぎる。長い坂の先で丸木崎トンネルを抜け,小半島を横切る。こんな風に,浦と小さな半島の峠が交互に現われる。相変わらず雲行きも不安定で,暗くなって雨が降り,しばらくするとカッと陽が射すことを繰り返す。

久志浦の入り口には砂嘴のような形の小さな岬(宮崎鼻)が…
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 道が広かったのは久志浦までで,その先は1.5車線幅の区間となった。見通しも悪い箇所が多く,距離の割に時間が掛かる。
 久志浦の次は秋目浦。鑑真が漂着した地とされる。

 鑑真は天平5年(733)に聖武天皇が派遣した遣唐使の乞いに応じ,唐から出国を試みたが,5度も失敗した。失明しながらも,天平勝宝5年(753)に6度目の渡海で遂に沖縄に渡ることに成功した。そこから屋久島を経由して大宰府を目指したが,遭難して“薩摩国阿多郡秋妻屋浦”に漂着した。この秋妻屋浦が秋目浦に比定されている(郡はのちに阿多郡から川辺郡に変更された)。
 秋目浦には「唐浦(もろこしうら)」という地名も残っており,大陸との繋がりを窺わせる。

今藤峠辺りから秋目浦
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 秋目浦の位置には枇榔島とも称される沖秋目島がある。やや面積のある島だが,とにかく山がちな地形をしている。
 沖秋目島にはビロー樹が繁茂していたために江戸時代には蒲葵(びろう)島と呼ばれていたが,明治初期の大火によって全滅した。戦後に外地からの引揚者が開拓を試みたが,水不足とネズミの害に遭い,無人島に戻ったという。

後藤鼻から手近に見える沖秋目島
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 秋目浦から野間崎付け根の野間池までは,浦を挟まずに海蝕崖の断崖が続く。海と山のせめぎ合いのような地形で,国道は最高で標高170メートルくらいの崖の中腹をゆく。
 もう少し晴れていれば良かったけれど,この区間が最も眺望が良かった。

野間崎が見えてきた
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 長い坂を下ると,野間池が見えてきた。元々隔絶性の高い入り江だったために“池”という地名になったのだろうが,入り口の埋め立てが進んだためにさらに池のようになっている。
 野間池の集落から坂を登って,野間崎方面に行ってみる。非常に細い道で,見通しも悪くて肝を冷やした。
 標高115メートルの見晴らしの良い場所に立つと,ここまで辿ってきた急峻な地形が重なり合って見えた。波の音は聴こえず,風力発電の風車が風を切る音がしている。

 細い道は野間崎先端の野間岬附近の灯台近くまで通じているようだが,西の海は暗いし,道も荒れていそうなので引き返した。

野間崎の高台から沖秋目島方面。陽が射してくれたので眼福
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左にカーブした崖と海が接するところが野間岬
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 野間池から引き続き国道226号を東へ走る。道幅が広くなり,海沿いを快走する。が,国道の改良はまだ半ばらしく,狭い区間も残っていた。
 鼻山を回り込むと,石積みの段々畑が現われ,目をみはった。平地に乏しい野間半島では段々畑が多いが,ここのものは規模が大きく,特に「谷山の段々畑」と呼ばれている。
 谷山(たにのやま)の段々畑は江戸時代後期に入植者によって築かれたとされる。畑一枚の面積は小さく,平成6年までサツマイモや花卉の栽培が行われていたという。

国道の上と下に展開する段々畑
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 谷山の附近が国道最後の未改良区間となり,ペースが上がる。小浦を回ると宏大な干拓地が現われ,風景も荒々しいものから穏やかなものへと変わってきた。

高崎鼻附近から吹上浜を遠望
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 南さつま市の中心をなす加世田は県道でパスし,国道270号を北へ走る。
 加世田を流れる万之瀬川より北は,砂丘の吹上浜となる。 この砂丘は緩やかな弧を描きながら南北約30キロにわたって続き,最大幅は2.8キロに達する。
 砂丘と東側のシラス台地の間には僅かな平野があり,国道はアップダウンを繰り返す。排水性の悪そうな地形だ。

 日置市に入った伊作川のすぐ北側で砂丘に出てみた。雲が低く,荒涼としていて人気もない。

荒涼とした砂の高まり
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砂山の向こうは海に届きそうなくらい低く垂れこめた雲
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波打際にて
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 時刻は18時少し前。そろそろ鹿児島に戻ろう。
 永吉から県道35号を東へ。あまり広い道ではなかったが,交通量が少ないシラス台地上の茶畑をゆくルートだった。
 JR鹿児島線の薩摩松元駅前に出て,今度は24号。山の中だが,鹿児島の街が近づいて交通量が増えた。九州道の鹿児島ICの下をくぐり,武岡トンネルをくぐると突然鹿児島中央駅の裏手に出た。

 夕食を摂ったりして時間を潰し,20時にコインパーキングにクルマを収めた。今夜のホテルは天文館の繁華街にあり,駐車場が1,080円と高い。少し離れたコインパーキングなら20~8時で300円で済む。
 明日は晴れの予報が出ている。早く起きることにしよう。

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