冬の南房総ひとまわり―鹿野山,勝浦八幡岬,鴨川魚見塚,洲崎,内房の夕景

旅行日:平成29年1月12日
 平成29年の一発目は房総半島へ。
 私は雪道や凍結路の運転には自信がないので,この時季のドライブ先はかなり限られてしまう。が,選択肢が狭まるからこその行き先だってある。

 6:20頃に出発し,保土ケ谷バイパス,首都高狩場線,湾岸線経由でアクアラインへ。朝のラッシュが始まったところで,上川井ICから新保土ケ谷にかけて激しい渋滞。横浜や東京の都心を挟んだ千葉県,茨城県になかなか行かないのは,クルマにしても電車にしてもこの混雑を嫌ってのことだ。

 海ほたるPAまでは2時間弱であった。気温は低いが,ほぼ無風なのでそれほど寒さは感じなかった。

冬場なので富士山や丹沢の眺望が良好
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多くの船が行き交い,飛行機がしきりに降下してくる
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 コーヒーを飲みながら地図を開き,きょうのコースを思案する。最終的に南房総を回ること以外は特に決めていなかった。
 できれば未踏のエリアを通りたいので,鹿野山から亀山を経て,勝浦で外房に出ることに決める。

 木更津金田ICで下り,国道16・127号を南下する。9時だというのに,両方向とも順調に流れている。
 君津SIC附近から県道163号を駆け上がり,鹿野山に上がる。鹿野山(かのうさん)は熊野峯,白鳥峯,春日峯からなる山で,頂上附近はなだらかな山容をしている。房総半島らしい低い山で,標高は379メートル(白鳥峯)しかない。道路も通じ,山のてっぺんだというのにゴルフ場まである。

 山頂の近くに神野寺という古そうな寺院があったので,少々の立ち寄り。寺伝は推古天皇6年(598),聖徳太子の創建と伝え,鎌倉時代には親鸞が入山したという。里見氏,豊臣秀吉,徳川家などから庇護され,江戸時代は50石の寺領があった。

表門は四脚門で,室町時代後期の建立(国重文)
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豪壮な本堂は宝永5年(1708)の再建
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 白鳥峯には九十九谷公園というのがある。
 房総半島の内陸部を一望する眺めの良い場所なのだが,その眺望はかなり地味である。しかし,一番の後ろに高さの揃った稜線が続き,眼下の谷は迷路のような複雑さ。これこそ房総丘陵という景色が広がる。
 なお,晩秋などの条件の良い日は霧が谷を埋め,その景色が絶佳だという。

山と谷が織りなす複雑な房総丘陵
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 急な坂で小糸川の谷に一気に下り,有料道路の房総スカイラインに入る。「スカイライン」という名称だが,稜線をゆく区間は少なく,やや規格の良い普通の道路という感じがした。
 無料措置中だというが,料金所が撤去されていた。償却期間終了まであとわずかで,もう料金を収受するつもりはないようだ。

 片倉ダムから小櫃川を亀山ダムまで下り,国道465号を東へ。交通量が少なく,部分的に狭かった。房総半島の河川は波長のグラフのように周期的な嵌入蛇行を繰り返しているので,それに付き合わされる道路も大変だ。幸い,トンネルを掘りやすい地質であるので,狭いトンネルでショートカットしたりする。
 小櫃川から養老川,夷隅川といくつも水系を跨ぎ,大多喜町の総元から国道297号を南下する。

 海が見えてくると,急に街が開けた。勝浦は湾奥の狭い平地の街であるので道が狭い。路上駐車をかわすように慎重に走り,八幡岬に足を印す。
 駐車場から少し歩くと,岬の上に出た。

八幡岬から勝浦燈台を望む
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西の海岸線は白っぽい切り立った崖が続く
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 勝浦から海岸沿いを西へ。
 勝浦と鴨川の間はリアス式海岸が発達し,海と山の際立った地形を見せる。そのハイライトは「おせんころがし」であるが,国道は容赦なくトンネルに入ってしまう。険しい山の間には興津,内浦(小湊),天津といった湾奥の港町を通過する。
 それを抜けると突然平地が開けて鴨川に到る。鴨川市は人口3万強の小さな市であるが,こうして山間から出てくると大都市に見える。

 街を抜けた魚見塚展望台に上がる。標高100メートルほどの位置に建つ展望台からは鴨川の街を一望にする。
 なお,展望台の直下にも駐車場が整備されているが,そこに到るまでの道は恐ろしく狭い。手前の公園の駐車場から歩いたほうが良いと思う。

湾内に長い砂浜を持つ鴨川。奥は小湊の入道ケ岬
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直下にはコバルトブルーの海が広がる
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 下三原から南はおそらく初めて通る道。房総半島南部の海沿いは国道410号が通じているが,それよりも外側(海寄り)の道がある区間も多い。交通量も少なく,道も悪くはないので,ドライブにはこちらの方が良さそうだ。
 南房総は波蝕台や海岸平野の発達が顕著で,半島の東側や西側とはだいぶ様相が異なる。

千倉では波が高く,サーファーが多かった
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旧白浜町にて傾斜した隆起波蝕台
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 半島最南端の野島崎を回る。野島埼灯台だけは訪れたことがあるので,今回はパスして遠望に留める。
 波の高さは先ほどから気になっていたが,風も急激に強まってきた。

逆光の野島埼灯台
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 相浜からは「房総フラワーライン」と名付けられた県道をゆく。道沿いに延々と植えられた菜の花が咲いている。色彩に乏しい季節だから,その鮮やかな黄色がひときわ眩しい。
 飛び砂が激しく,視界が霞むこともある。場所によってはすっかり砂に埋まってしまった菜の花もあった。

フラワーラインを彩る菜の花
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 ところで,房総半島は足のような形状をしている。野島埼をかかとだとすると,爪先の位置に洲崎がある。こちらは全く来たことがなかった。
 洲崎の高台には大正8年に建てられた灯台があり,東京湾の入り口を守っている。ここからだと三浦半島が短いということがよく判る。
 細い竹が密生した藪を抜け,海辺に出る。強風にたわむ竹がミシミシと気味の悪い音を立てる。
 富士山には雲がまとわりついている。そして,伊豆大島の三原山が近い。

低い雲を浮かべた鏡ケ浦(館山湾)
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うねる光の道の先に三原山が横たわる
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 時刻は16時少し前。確実に周りが開ける富津岬で日没を迎えたかったが,間に合わなさそうだ。昼から夕方というのはどうしてこうも時間の経つのが早いのだろう。
 館山の街を抜け,富浦から国道127号を北上。街と街の間は比較的走りやすいが,街中は道が狭い上に鈎型に曲がる箇所がいくつかある。館山道が開通するまでは大変だったろうなと思う。

 太陽がかなり下がってきたので,鋸南町の勝山で海辺に出た。立っていられないくらいの強風が海から吹き付け,容赦なく波飛沫を浴びせてきた。

浮島の隣に陽が沈む
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三浦半島の陸影と富士山が浮かび上がった
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 さらに北上し,鋸山の下で安房国から上総国に入る。空の色が変わってきたところで,再び海辺に出る。場所は富津市の湊海岸。上総湊と言った方が通りが良いだろう。江戸時代は「湊浦」と呼ばれたそうで,アタマに何も冠しない「THE 湊」だ。
 国境の山並みが衝立になるためか,風は勝山ほどではなかったが,強いことは強い。じっくり写したくなる景色だったが,三脚を立てる気力はなかった。

対岸を縁取る灯に,ブルーモーメントを映す波打際
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大きな満月が昇った
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 往きと同じように木更津金田ICまでは一般道を走り,アクアラインへ。吹き流しが真横になるくらいの横風。
 浮島ICで流出し,産業道路,国道15・1号,保土ケ谷バイパスを通って帰投。走行距離は365.6キロで,ガソリン代,高速代ともに普段よりかなり少ない金額となった。
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