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阿蘇火山さわりだけ

旅行日:平成27年1月(15~)16~19日⑧
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 九州の夜明は遅い。
 7:23,真っ赤に塗られたディーゼルカーが水前寺駅のホームに入ってくる。太陽はまだ阿蘇の山の後ろだ。きょうはその山を越え,大分へ向かう。
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 熊本の市街地をぐるりと回りこみ,竜田口の手前で白川を渡る。阿蘇から流れてくる川である。ここからこの川を遡る。
 ぴったり並行する大津街道は加藤清正が整備した参覲交代の道である。大津まで杉並木が続く。熊本藩の参覲交代ルートは,熊本から阿蘇の山を越え,豊後国内の藩領鶴崎を経て佐賀関までが陸路であった。
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 交換待ちのため,原水で3分停車。今朝は冷え込み,周辺の田園には霜が降りて白くなっている。その向こうに聳えるのは阿蘇外輪山の鞍岳だろうか。
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 熊本から細長く続いてきた平地は,肥後大津で尽きる。電化されているのはここまでで,空がすっきりする。
 谷間に入り,ようやく出てきた太陽がまた隠れた。勾配は25パーミルを超え,33パーミルが続くが,列車は難なく登ってゆく。
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 線路が平らになり,8:09,立野着。阿蘇の外輪山を越えるためには前に進むだけでは勾配がきつくなってしまう。そのため,この駅はスイッチバック式になっている。8分も停まるので,ホームに降りて冷え冷えとした空気を吸い込む。
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 熊本ゆきのディーゼルカーが山を下りてきた。こののんびりした時間こそ,鈍行の旅の愉しみだ。
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 来た方向に走り出し,別の線路へと歩を進める。スイッチバックの全景を眺められないかと思っていたが,鉄道を嘲笑うかのように国道の高架が線路を跨ぎ越していた。
 1キロほど後退し,折返し線に入る。運転士が戻ってきて,また別の線路に進む。こうして立野駅の直上にくるときまでに,標高にして約60メートルを稼いでいる。
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 一方,白川は立野で二手に分かれる。阿蘇のカルデラ内部を南北に分けるように中央火口丘が連なるが,本流の白川はその南の南郷谷から,支流の黒川は北の阿蘇谷から流れてくる。豊肥線は後者を選ぶ。
 外輪山の向こうで噴煙が上がっているのが見えてきた。手前の山の中腹からも湯煙が立ち昇っている。方角からすると,垂玉温泉か地獄温泉だろう。
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 流石に速度が落ち,深い谷を刻んでいた黒川が急速にせり上がってきた。が,意外とあっけなく周囲が開けた。
 赤水を過ぎると,途端に田園地帯になる。左手には植生に乏しい北側の外輪山の内壁が屏風のようにそそり立っている。
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 標高は500メートル弱に達し,今朝は気温が氷点下6.7度まで下がったというから,草も線路も霜で白くなり,水溜まりには氷が張っている。だが,積雪はなかった。
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 内牧,阿蘇を過ぎ,列車の終点である宮地には9:00に着いた。この先は普通列車の本数が少なく,7:05発の始発のあとは13:12発まで空いている。9:50発に特急があるので,これで豊後竹田まで行く積りである。
 乗り継ぎ時間を利用し,駅の南約1.2キロにある阿蘇神社を訪れる。
 宮地駅の駅舎は昭和18年に建てられたものだそうだ。時節を反映してか,日本的な高塀造りの真っ赤な屋根が強い印象を与える。
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 宮地駅から神社へは,緩やかな坂をまっすぐ下って15分ほどで着く。
 参道は神社に向かってではなく,並行に延びている。横参道というそうで,その延長線上には阿蘇の山がある。
 門前町は湧水に恵まれており,手水場以外にも引き入れられた水がほとばしっていた。
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 阿蘇神社には健磐竜命,阿蘇都比め(口偏に羊)命など,12神が祀られている。神話では神武天皇の子神の八井耳命の子である健磐竜がカルデラ内の水を抜き,耕地を作り,土地の出身である都比めと夫婦になったとある。それを夫婦の子である速瓶玉命が祀ったのが,神社の創建とされる。この神話は火山信仰と農業信仰が結託したものと考えられている。そして,この神社は肥後国一宮として信仰を集めてきた。
 楼門は(1849)に再建されたもので,前に立つ人と較べるとその巨大さがよく分かる。
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 選挙が近いようで,社殿の前では決起集会が行われていた。勇ましい声がし,近づきがたい雰囲気だ。
 神社の社殿は,拝殿の後ろに本殿があることが多いようだが,阿蘇神社では拝殿の後ろに一ノ神殿,二ノ神殿が並び,さらにその背後に三ノ神殿が配置されている。
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 3つの神殿は透垣で囲われ,左右に回りこまねば見ることができない。いずれも天保年間に熊本藩主の細川家の寄進で再建された。
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 駅とは反対側に門前町が形成されている。
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 観光地然としていてあまり興味は惹かれないし,そもそも殆どの店がまだ閉まっている。
 しかし,沢山設置された水基は気になる。境内もそうだったが,宮地湧水群と呼ばれるほど,水に恵まれている。
 手をつけてみると,気温が低いこともあってか,温かく感じる。冬場の水道水はひどく冷たいが,これなら充分水仕事ができるだろう。
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 そうこうしているうちに列車の時刻が近づいてきた。しかも,時計を見るとあと10分しかない。
 駅へと続く登り坂の途中,噴煙を上げる中岳を望む。街の人たちにとっては珍しくもないようで見向きもしないが,停めてあるクルマの中には,降灰で灰色に汚れているものもあった。今の風向きなら宮地は平気そうだが,山の近くなど,積もるところは積もるのだろう。
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 途中から走り出したが,荷物が重く,身体が思うように動かない。しかも,駅前の国道との交差点は赤信号であった。
 駅舎に飛び込んだ時,別府ゆきの特急列車の赤い車体が動き出した。

 前述のように,この先の鈍行は13時過ぎまでない。特急にしてみても次は12:52発なので,丁度あと3時間ある。このまま待つのはあまりにも不毛である。
 幸い,反対の熊本方面に行く列車は約30分後の10:21発というのがある。私はこの列車で阿蘇駅まで戻ることにした。阿蘇に10:28に着き,踵を返して12:48発の特急で先に進めばいい。

 近くのコンビニで少々補給をし,駅備え付けの時刻表で阿蘇駅からのバス路線を調べてみたが,妙案は思いつかなかった。
 予定外に乗ることになった普通列車は国鉄形の2両連結であった。車掌がドアを開け,行先の記されたサボ(サイドボードの略)を交換している。
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 噴煙を上げる中岳を望みながら,7分で阿蘇に到着。元々は坊中という駅名であったが,昭和の大合併で阿蘇町になったため,改称された。平成の大合併で今度は阿蘇市になったが,市役所は旧一の宮町の宮地にある。
 このような経緯のため,阿蘇の中心だとは一概に言えないのだが,バス路線が多く乗り入れる阿蘇観光の拠点駅となっている。
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 駅レンタカーにはこんなクルマもいた。
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 私は阿蘇火山にも関心があるのだが,今は冬である。凍結や積雪にはクルマの運転の自身がない。冬枯れの景色も今一つだろう。そんな訳で,阿蘇神社を除いては列車で通り抜けるだけのいわば「阿蘇入門編」を予定していたのだが,そうもいかなくなってしまった。
 2時間強では火山博物館にすら行かれないので,レンタサイクルでカルデラの真ん中を走ってみることにした。

 駅舎内で駅で借りた自転車は電動であった。
 国道212号を内牧温泉の方へ走らせる。緩やかな下り坂なので,モーターはオフである。水溜まりに氷の張った水田の向こう,外輪山の後ろに久住山が見える。
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 阿蘇カルデラを形成した火山活動は約27万年前から9万年前のものである。この22万年の間に大規模な爆発的噴火と活動休止を4サイクル繰り返したという。9万年前の噴火は20万立方メートルという膨大な火砕流を発生させ,それによる火山灰は日本中に降り積もった。北海道東部の阿寒でさえ,20センチの厚さで堆積しているという。
 カルデラは4サイクルの火山活動ごとに陥没と拡大を繰り返し,現在の大きさに近づいた。内部が湖になっていた時期もあったが,断層運動と浸食により,立野のところが突き破られて白川が流れ出たことにより,水が抜けた。現在も地下に水盆があり,カルデラ内外に湧水という恵みを与えている。
 活動を続ける中央火口丘は,カルデラが現在の形状に近づいた9万年前の噴火直後に生じたとされる。この中でいくつもの火山が活動を行い,現在は中岳だけが活発な活動を見せている。
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 左手には巨大な灰塚(手前)と本塚(奥)を望む。湖の中で噴火が起こり,固まったものだそうだ。
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 写真を撮るために自転車を停めたりしたので時間が掛かったが,40分で内牧温泉に入った。阿蘇で最大の温泉街だというが,施設が広範囲に散っているため,温泉街らしさはあまりなかった。
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 来た道を引き返し,途中で折れて本塚の方へ行ってみた。
 今度は登り坂なので,自転車のモーターをオンにしてみる。漕ぎ出すと,後ろから押されるように力を得て加速する。これはかなり楽だ。
 本塚は前方後円墳のような形状をしている。夏は緑に覆われるそうだが,今の季節は寂しい。
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 中岳でさらなる噴火があったようだ。音はしなかったが,噴煙が濃くなった。
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 時間に余裕を持って阿蘇駅に戻り,自転車を返却。
 当初の予定では宮地から豊後竹田に行き,岡城などを見学し,普通列車で14:18に大分に着くことにしていた。
 これから竹田に寄るとジリジリ遅れが波及してしまうため,阿蘇から大分まで特急で直行することにする。大分着は14:29なので,宮地での遅れは殆ど取り戻せる。自由席特急料金は930円。特急には乗れない「旅の鉄人パス」でなく,普通乗車券にしたのが効いてくる。今回,小倉から戸畑までICカードで乗車し,乗車券は「若松→宇土」,「宇土→網田」,「三角→亀川」と購入した。
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